昔、フランスの友人が夫婦(男同士の)で日本に来る事になった。
日本の【お茶席】というものを是非体験したいと言う。
私は知り合いの偉~い茶道の師範に頼み込み、お茶席を設けて貰うことにした。
この先生は、日本の古典文化に貢献したという事から、国から勲章を頂いている方で、とても厳格で真面目なお方であった。
年齢もそれ相当の方なので、ホモの人間とのお付き合いもなければ知識も無いような方だった。
私は先生に彼らがホモであることは内緒にし、茶道に興味を持つ外国からの客人の為、是非お願いしたいと頼み込んだのである。
友人達に対しても、お茶席の間はくれぐれも女言葉など使わないよう、注意をしておいた。
先生の自宅の庭にある素晴らしいお茶室で開かれることとなり、先生はその日の為に有名な日本料理店に仕出しを注文、一人14000円ほどのお茶懐石と相成った。
料理屋の器では、せっかくの外国からのお客様に申し訳ないと、先生秘蔵の素ン晴らしい器の数々も用意され、事前に私との打ち合わせも入念に行われた。
お茶席には、このフランス人夫婦と彼らの友人(日本人、当然ながらホモ)、そして私という4人が参加する事になったのだが、当日は数人のお弟子さんがお茶立ての準備をしたり、我々の為にサービスをしてくれたり、更に撮影班として二人のお弟子さんがカメラとビデオを回しておられた。
我々が到着した時点からすぐにビデオが回され、友人達は少々面喰っていたが、外国人とのお茶席など滅多にない事で許してやってね!と、私は友人達に説明した。
母屋での団欒(勲章や数々の表彰状の自慢話)が済み、我々は少々の疲労感を感じつつ、離れの茶室へと向かったのである。
すぐに茶室へ通されるのかと思いきや、今度はお庭や灯篭などの長々の説明、茶室への入り方の講義を受け、もうこの時点でホトホト疲れた我々4人であった。
が、素晴らしい茶室に彼らも大感激し、続くお料理の素晴らしさにも感嘆の声を挙げていた。
結構真面目な4人であったのでチャンと正座をし、下手ながらも箸を使って食事を進めていたのだが、数種のお酒も用意されており、最初は少々の遠慮があったものの、アルコールが廻ってきたと同時に量も進み、段々酔いが回ってきたのである。
日本語・英語・フランス語が飛び交うお茶席、彼等の緊張度が落ち始めたと同時に、言葉使いもおかしくなってきた。
最初はお互いに本名で呼び合っていたのだが、ある時点から彼らの通称が飛び出してきた。
(※プライベートでは、彼らは本名ではなく女名前の通称を使う)
私だけ一人が緊張感のままで、彼らにそっと注意をしたのだが、一度崩れ始めた彼らの緊張感は元に戻る事はなく、
「ネェ、リンダ~~~!」
「イヤ~ン、オードリィ~~~!」
「キャ~ァ~~~!マーガレット!!!」
もうこの時点で、彼らの言葉使いは完全に女言葉と化してしまったのである。
そこに先生
「Passerottaさん、貴女のお友達っておかしな方達ね、言葉は解らないけれど、なんだか女性みたいな言葉使いに聞こえるわ」
「そうですね先生、フランス語って少々女性っぽいかもしれません・・・」と私
(そんな訳ないだろ!)
私は冷や汗垂らしながら必死に弁解しているというのに、箍が外れた彼等には全く関係ない様子で・・・
と、そこへ夫婦の片割れジャン・ピエールの怒りが!!!
何事かいな!と私を筆頭に先生、お弟子さん達もビックリしたのだが
ジャン・ピエールの怒りの原因は・・・
彼の大事な大事な愛する妻(男)が、酔いも任せて私に雪崩れかかり、私の膝に手を置いた事にジェラシーを感じての事だったのである。
ギョエ~~~ッ!
純(?)女の私にヤキモチなんか焼くなよ~~~ぉ!
あれからである、ジャン・ピエールの私に対する眼つきが鋭くなったのは。
そして、お茶の先生の私に対する眼つきが変ったのも・・・ |